なぜ私たちの祖先は、無抵抗の朝鮮人を殺害できたのか?(関東大震災)

教材のねらい

芝浦工業大学柏中学高等学校の神永卓弥先生からの提供です。

神永先生からのメッセージ

11月のSSH公開研究授業において発表した教材を共有します。

関東大震災にともなって発生した朝鮮人虐殺事件を扱ったものになります。横網町の記述を確認して事件の残虐性を確認したうえで、エキスパート活動に移ります。

【資料クローバー】
都市下層職工らの対抗文化からはじめ、「雇用が奪われている」という恐れが、「朝鮮人は気に入らない」という感情に乗じる形で暴発した、と展開していきます。

【資料ハート】
「流言蜚語を人びとがどのように受け止めたのか?」を主題として、震災の混乱で冷静な判断を人びとが失う様子や、冷静な判断が難しい状況の中でも自らの信念を貫こうとす様子を確認させます。そのあとで、親しい朝鮮人は保護し、そうでない朝鮮人を虐殺した例をもとに、外集団との接触の欠如や知識不足に起因して恐れや憎悪が育つという社会心理学の成果を確認させていきます。既習概念である大衆社会の性質を活用してくれることを期待して作りました。

【資料スペード】
「十五円五十銭」を用いた識別を確認したあと、地方出身者の悲劇や千田是也の事例などをもとに、朝鮮人と日本人の間に引かれた境界線が仮想的なものであったことを確認させます。そのあと、「統合と排除」という対立概念で事象を分析させるなかで、ナショナリズム・帝国主義などの既習概念を活用する機会をつくろうと工夫してみました。

まとめの中で、「恐怖」「恐れ」を共通点にまとめる班が出ると予想して作りましたが、実際には「大衆は流されやすい」「日本人は同調圧力に弱い」といったまとめ方になってしまう班が多かったように思います。

次年度は歴史総合を持たない予定ですので、不完全ながら共有させていただき、改良していただければと思います。タイトルが極めてセンセーショナルなため、教室の生徒の状況に応じて、題材などを変更していただく必要がありますので、その点だけご注意ください。

参考文献・資料

  • 藤野裕子『都市と暴動の民衆史 東京・1905-1923年』有志舎,2015
  • 藤野裕子『民衆暴力 -一揆・暴動・虐殺の日本近代』中公新書,2020
  • 松沢裕作『生きづらい明治社会――不安と競争の時代』岩波ジュニア新書,2018
  • 佐藤冬樹『関東大震災と民衆犯罪 立件された一一四件の記録から』筑摩選書,2023
  • 西崎雅夫編『証言集 関東大震災の直後 朝鮮人と日本人』ちくま文庫,2018
  • 鈴木淳『関東大震災』講談社学術文庫,2016
  • 千葉県における追悼・調査実行委員会編『いわれなく殺された人びと 関東大震災と朝鮮人』青木書店,1983
  • マシュー・ウィリアムズ『憎悪の科学』河出書房新社,2023
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