ウクライナ情勢について、”今””ココ”で”私たち”が語ることにどんな意味があるだろう?

教材のねらい

神奈川県立横浜国際高等学校の徳原拓哉先生からの提供です。

単元や教材の説明

 3月21日にN H Kニュース7にて報道された、ウクライナ情勢についての実践の教材と指導案になります。

 本校では、多様なルーツを持つ生徒が在籍しており、その中には教室でロシア語を話す生徒もいます。今回は、その友人から「当該の生徒がニュースに心を痛めている。私はどう話せばいいかわからない、知りたい」という相談があり、授業をすることを決断しました。私の受け持ちのクラスには当該の生徒はいなかったものの、ロシアとウクライナの問題を直接に取り上げることは、このコンテクストの中では非常に暴力的に作用する恐れがあること、またむしろ焦点はこの問題によって日本の、私たちの身の回りで起きていることであることから、この問いとしています。

■目標
ウクライナ情勢に関連して日本や身の回りで起きている問題・課題について、資料を読み解き・対話をしながら歴史的に考察する活動を通じて、国際社会の中で生きる主体的個人としての姿勢を養う。

■評価基準

【a】直近の報道や話題に関する対話を通じ主題を見出し、世界の中の日本に生きる個人として主体的に探究できる。
【b】未決の論争的課題についての対話を通じて、現実的利害や思想・価値観の対立に配慮しながら、自らの考えを表現できる。
【c】資料に基づいたジグソー活動を通じて、一つの資料を複数の観点から読み解き、さらに主題に合わせて複数の資料から適切な情報を組み合わせることができる。
【d】主題学習を通じて、現代的諸課題に関する認識を深め、現代の歴史的な変化と結び付けて理解することができる。

■授業の流れ

評価活動・学習活動 予想される生徒の反応支援のための手立て
①:ウクライナ問題に関連して日本で起きている課題(ウクライナ・ロシアにゆかりのある人の受ける差別、SNSの問題)に関する資料を読み、論点を見出す。A:資料を読み解き、自分の考えを表現できる。
B:資料を読み解いて、自分の考えを表現することが難しい。
B:一人学びの時間を設けて、自らの考えを持つことを促す。
A・B:対話の時間を設けて、学びあいを促す。
②:MQ-1 私たちが、ウクライナ問題を”今””ココ”で語ることは、どんな意味を持つのだろう。A:自らの考えを表現することができる。
B:自らの考えを表現することが難しい。
B:主発問について論点を持つために、学習活動①を設ける。
ジグソー学習

③:SQ-1:それぞれの資料(A~C)から、MQについてどんなことが言えるだろう?

④:SQ‐2:同じ資料の人はどのようなことを考えているだろうか?(エキスパート)
A:資料を読み解き、的確に情報をまとめることができる。
B:資料を読み解くことはできるが、情報をまとめることに課題がある。
C:資料を読み解くことが難しい。
B・C:資料の読み解き、情報のまとめを助けるために、エキスパート学習の時間を設ける。
B:情報をまとめることを助けるために、ワークシート上に思考チャートを設ける。
⑤MQ‐1:MQに対して、グループの意見をまとめようA:グループで、主題に対して意見をまとめ表現できる。
B:グループで多様な意見が出、それをまとめることが難しい。
C:グループで議論することが難しい。
B:どのような点で議論が分かれたかを明確にしてみるように指示し、メタ認知を促す。
C:それぞれ意見を出したうえで、意見の共通点と意相違点を考えてみるように助言する。

参考文献(英語文献は授業者訳)

  • Levstik, Barton,”Doing History: Investigating With Children in Elementary and Middle Schools”Routledge; 第4版 (2011/1/27)
  • Groot, Jerome de, “Consuming History Historians and Heritage in Contemporary Popular Culture”
  • 池田嘉郎(2022)研究ブログ(2022/3/15 accessed on)
  • 伊東孝之(2014)研究員の仕事の最前線(スラヴ・ユーラシア研究センター)
  • 伊藤守『情動の社会学―ポストメディア時代における“ミクロ知覚"の探求―』青土社 (2017/10/7)
  • 遅塚忠躬『史学概論』東京大学出版会、2010
  • 野々瀬浩司 受験生のためにー大学で歴史を学ぶ意味(2022/3/15,accessed on)
  • 産経新聞(2022/3/12)「誹謗中傷に嫌がらせ 心痛の在日ロシア人「誰も戦争望んでいない」
  • 時事ドットコム「侵攻、引き裂かれる人々 「ロシアの親族、信じてくれない」―在日ウクライナ人ら涙のデモ・東京」
  • ゼミ紹介(2014)「史料批判」を学ぶと、歴史の「真実」が見えてくる! 石濱ゼミ」(2022/3/15, accessed on)

*本教材は教材共有サイト(旧サイト)に2022年4月9日にアップロードされた教材と同じものです。

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単元に含まれる教材

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