戦時中の国民生活
教材のねらい
東京都立足立高等学校の山本治輝先生からの提供です。
山本先生からのメッセージ
東京都立足立高校(偏差値48~50程度)での実践です。歴史総合大項目B「大衆化と私たち」のうち、第二次世界大戦中の国民生活をテーマとした授業実践です。暮らしの手帖編『戦争中の暮しの記録』を中心に第二次世界大戦中の日本国民が残したエピソード4つをジグソー法で学習する授業です。
本時の問いは、「「戦争がいけないこと」なのはなぜ?」とし、当たり前のように身についている道徳的感情に対する理由を異なる4つの戦時中のエピソードから考えさせる授業になっています。
2学期以降、授業を作る際に、2023年8月の高大研第2部会における中島報告に基づいて、「なぜ目の前の生徒にこの単元を教えるのか」を意識しています。本校の生徒は、様々な活動において、積極性があまり見られず、最低限のことだけやる生徒が非常に多い傾向が見られます。また、穴埋め問題などすぐに答えを知ることができる一問一答形式を好む傾向にあり、学習に対して、積極的な探究心があまり見られません。そこで、総合型選抜入試などを見据えて、自分から多角的な視点で意見を言うことができる力を育成するために、本時の問いを設定しました。
本授業で扱ったエピソードは以下の通りです。
Å…インパール作戦中に自決した日本軍兵士のエピソード
B…小間物商から出征した三浦徳平が記録したビルマで現地住民を虐殺したエピソード
C…兵器工場に動員された東京の女学生のエピソード
D…9歳だった小学生の家族が疎開によって離れ離れになるエピソード
エピソードの選定については、他の教員から、日本の植民地となっていた韓国のエピソード等を入れた方がいいのではないかという意見を頂きました。
本時の展開としては、「「戦争がいけないこと」なのはなぜ?」を本時の問いとし、エキスパート学習のところで、各資料を通して本時の問いに対する自分の考えをまとめるようにしています。
ジグソー学習では、担当した資料の内容の要約と本時の問いに対して、担当資料をふまえた自分の考えを共有します。
戦場と銃後のエピソードの両方を1時間で扱っているため、戦場に関する学習としても銃後に関する学習としても実践として不十分だと思います。また、リード文の要約にも不十分なところがありますので、その点はご了承ください。
今回参考にした文献は今回紹介したエピソード以外にも多くの興味深い記録が紹介されているため、次年度以降パージョンアップを行う予定です。次年度以降のバージョンアップのためにもご意見をお待ちしております。
参考文献・資料
- 吉田裕『日本軍兵士-アジア・太平洋戦争の現実』中公新書、2017年
- 吉見義明『草の根のファシズムー日本民衆の戦争体験』岩波現代文庫、2022年
- 暮らしの手帖編『戦争中の暮しの記録』暮らしの手帖社、1969年