東アジアと中央ユーラシア

教材のねらい

広島市立基町高等学校の永福永伍先生からの提供です。

永福先生からのメッセージ

・どの単元で実施したかについて
中央ユーラシアの導入として作成したKCJ(知識構成型ジグソー)です。単元としては、大項目Bの中項目「諸地域の歴史的特質」の事項にある「秦・漢と遊牧国家、唐と近隣諸国の動向などを基に、東アジアと中央ユーラシアの歴史的特質を理解すること」に該当する小単元内で実施しました。さらに細かく言えば、秦・漢帝国の滅亡から魏晋南北朝の展開を学んだあとに本授業をおこないました。ちなみに、「西アジアと地中海周辺」及び「南アジアと東南アジア」の歴史的特質はすでに終えております。

・授業の目標について
本授業は、中央ユーラシアの遊牧民とオアシス民の「共生」と、中央ユーラシアの世界史的意義について取り扱っております。また、本授業の目標は、この地域の交易や国家形成、民族の移動が、ユーラシアの政治的・経済的・文化的な交流や変革をもたらすきっかけとなり、歴史を大きく動かす大きなエネルギーとなったことを、中央ユーラシアの自然的・社会的特質や歴史的展開を追いながら獲得することを目指しています。以上のことを満たすために、「遊牧民とオアシス民の「共生」は、7世紀までの世界に何をもたらしたか?」というMQを設定しました。

・資料について
本授業は、岡美穂子編集『つなぐ世界史1古代・中世』にある、栗屋祐作「乾燥世界における人びとのくらしとシルクロード」、妹尾達彦「中部ユーラシアを動く‐4~7世紀の十字路-」に着想を得て作成しています。よって、これらを中心にエキスパート資料を作成しています。

・授業や授業を実施してみて
MQを考えるうえで、多岐にわたる情報を組み合わせ、それを対話を交えながら答えを出すというプロセスが必要であると考え、KCJ(知識構成型ジグソー)を採用しました。
生徒が書いてきたものやクロストークでの交流をみると、中央ユーラシアは我々の住む農業地域とはことなる特質を持ち、そしてその特質から「遊牧国家」が生まれ、それらが前近代では最強の武力を持つことと中央ユーラシアという位置ゆえに、ヨーロッパやイラン、西北インド、中国といった農業地域の古典国家滅亡とあらたな国家の形成となったことは獲得していました。このように、ユーラシア各地の政治的「破壊」と「創造」のエネルギーとなったことは獲得したのですが、シルクロードを媒介として文化の「交流」や「融合」のエネルギーになったことにはあまり達していなかったみたいです。したがって、クロストークでの教員による「差し戻しの問い」などの場面でグループで考えさせる場面を設けました。

・反省
授業自体の拙さはさておき、現代日本とは異なる地域の「他者」について「知る」ということしかできず、そこから、もう一度「我々」に立ち返る仕掛けがなかったことが反省として挙げられると思います。

参考文献・資料

  • 教科書
    ・『世界史探究』東京書籍,2023.
  • 参考文献
    ・岡美穂子編『つなぐ世界史1古代・中世』清水書院,2023.(エキスパート資料♤の文章は、この書籍の妹尾達彦「中部ユーラシアを動く‐4~7世紀の十字路-」を基に作成しています。)
    ・小松久男編『新版世界各国史4 中央ユーラシア史』山川出版社,2000.
    ・妹尾達彦『グローバル・ヒストリー』中央大学出版部,2018.
    ・羽田正『地域史と世界史』ミネルヴァ書房,2016.
    ・林俊雄『世界史リブレット98 遊牧国家の誕生』山川出版社,2009.
この先に含まれるコンテンツは会員限定のコンテンツです。

単元に含まれる教材

この先に含まれるコンテンツは会員限定のコンテンツです。

コメント

コメントはログイン中の会員のみ表示されます。