東アジア古代国家の形成

教材のねらい

広尾学園高等学校の高瀬邦彦先生からの提供です。

高瀬先生からのメッセージ

単元を貫く問い:日本の古代国家の形成は、大陸情勢とどのように関連していたのか

 日本の古代国家の形成について、教科書的な講義をしたうえで、この教材を用いることで深い理解を獲得するのがねらいです。そのため、教材の流れは一般的な日本古代史の授業(弥生時代⇒古墳時代⇒飛鳥時代)をなぞっています。詳しくは最初に掲げた「知識の構造図」を参照していただければと思います。

 今回の教材は日本の古代国家形成を「東アジアの中の日本」という観点で作成しています。古代の日本列島の動向に関しては、小学校・中学校の歴史では日本の動きを中心に記述され、歴史総合では扱わない時代となります。そのため、古代より日本はオリジナリティにあふれているかのように認識している人も少なくなく、大陸の影響が矮小化されがちです。しかし、実際は日本古代の社会変化・政治動向は大陸情勢と密接にかかわっています。例えば、厩戸王(聖徳太子)の冠位十二階や憲法十七条は中国や朝鮮半島の思想・制度の影響を強く受けていますし、乙巳の変・大化改新も唐の出現という大陸の緊迫した情勢が背景にあります。歴史総合では、近世・近代日本の動向は世界情勢と関連付けて記述されています。日本史を学ぶ初期の段階で国際的な視野で日本史を考えるという姿勢が身につくと、今後の学習にも役立ちますし、日本史探究の目標の1つである、歴史から現代的な諸課題を考える力(歴史を現代に転移させる力)にもつながります。また、白村江の戦いで行う歴史のIFは、現代の日本の国際社会での立ち回りを考えるうえでも重要だと思います。

 今回の内容において、生徒は初めて文献史料などに触れることになります。ただでさえ活字離れが進み、ネット上にわかりやすい解説動画があふれる中、わざわざ難解な資料を用いる理由は何なのか。諸資料をふんだんに使って考察することで、日本史学習における諸資料の重要性に気づくことができれば、この後の授業にも取り組みやすくなります。

 なお、教材については、ロイロノートでの使用を想定して作っていますので、紙媒体だと使いづらいかもしれません。アレンジしてご使用いただければ幸いです。

参考文献・資料

  • 山川出版社『詳説日本史図録』
  • 山川出版社『詳説世界史図録』
  • 山川出版社『現代の世界史』
  • 第一学習社『グローバルワイド 最新世界史図表』
  • 福岡市博物館ブログ2015/10/10
  • サイカルジャーナル NHKニュース
  • 埼玉県立さきたま資料館「埼玉・古墳群発掘調査報告書 第4集 瓦塚古墳」、埼玉県教委、1986。
  • 公益財団法人群馬県埋蔵文化財調査事業団
  • 宇治谷孟『全訳-現代文日本書紀 下巻』、筑摩書房、1986。
  • 中村璋八『五行大義 下 新編漢文選8』、明治書院、1998。
  • 本田済『韓非子-全現代語訳-』、講談社学術文庫、2022。
  • 応地利明『都城の系譜』、京都大学学術出版会、2011。
  • 岸俊男『日本の古代宮都』、岩波書店、1993。
  • 武田幸男「六世紀における朝鮮三国の国家体制」『東アジア世界における日本古代史講座 第4巻 朝鮮三国と倭国』、学生社、1980。
  • 林美希「唐王朝の官僚制と北衙禁軍」2018
  • 井上和人『日本古代国家と都城・王宮・山城』、雄山閣、2021。
この先に含まれるコンテンツは会員限定のコンテンツです。

単元に含まれる教材

この先に含まれるコンテンツは会員限定のコンテンツです。

コメント

コメントはログイン中の会員のみ表示されます。