あなたは大学で韓国からの留学生と知り合ったとき、「日本の韓国植民地支配」をどのように語る?
教材のねらい
兵庫県立相生高等学校の西山直輝先生からの提供です。
西山先生からのメッセージ
武井寛太先生の「あなたは大学で韓国からの留学生と知り合ったとき、「韓国併合」をどのように語る?」のプリント教材をほとんど踏襲して作成したものです。
変更した箇所としましては、以下の通りです。
・韓国併合までの歴史的経緯は前時に取り上げたため省略。
・導入部分に駐日韓国大使が相生市の徴用被害者慰霊碑訪問の記事を追加。
・日本史探究の教科書での記述と矢内原忠雄の手記などを参照させ、植民地支配の実態を考察するパートを追加。
・「連累」について考えるパートに、相生で徴用されていた朝鮮人の給料袋が発見されたことについての記事を追加。
上記のように変更したねらいとして、①地元に引き付けて日本の韓国植民地支配を考える。②日本史探究の授業として韓国併合から戦時中までのスパンで植民地支配について考える。ことを目指しました。
以下は、実践後のある生徒の記述です。
「日本人が朝鮮人を強制的に働かせたという記述もあれば、自由意志で彼らは働いていたとする記述もある。私ははじめ、どちらかがウソなのではないかと考えた。だが、「どちらも正しい」可能性を見落としてしまっていた。物事を歴史的に考えるには一つの視点から見るだけでは不十分なのだ。しかしながら、日本人が朝鮮人を傷つけてきたという事実は確かにある。その事実を「仕方なかった」という評価で済ませていいはずがない。また、その評価に至る「帝国意識」と、私たちの安定した生活は過去-現在間の連累によって成り立つものであり、朝鮮人の心の傷もまた、今日まで残り続けている。日本人のように生きることや、労働することを強いられ、自由や尊厳を剥奪され、彼らはどれだけ傷ついたことか、苦しかったことか、それを想像することしかできない今だからこそ、歴史を客観的かつ多角的な目で見つめなくてはいけない。よって、私は韓国からの留学生に「日本の韓国植民地支配」を語るうえで、決して一方的に意見を押し付けるのではなく、共に議論し、共に考察することを大切にしたい。」
参考文献・資料
- 教科書『詳説日本史探究』(山川出版社)
- 片野次雄『日韓併合 李朝滅亡・抵抗の記憶と光復』(彩流社、2010年)
- 「駐日韓国大使 兵庫県相生市の徴用被害者慰霊碑を初訪問」(聯合ニュース、2023.10.20、https://jp.yna.co.kr/view/AJP20231020004500882)
- 「<特報>「徴用工」に給料袋 適切報酬の証拠 遺族寄贈「歴史認識に活用を」」(産経新聞、2023.3.16、https://www.sankei.com/article/20230316-HF2KIMTFDVMPFJNEQPAUGYFNF4/)