君が代の歴史と対話する【大項目B・C】

教材のねらい

岡山県立津山商業高等学校の大森琉聖先生からの提供です。

大森先生からのメッセージ

歴史総合において、問いを軸に主題に対して考えを深め、疑問に感じたことや新たな問いを表現して検証する授業実践です。
生徒がラ=マルセイエーズの学習を通じて「君が代の歴史をほとんど知らない」と気づいたことを契機に、君が代の成立から変遷を大項目B・Cをまたぐ教材として構成しました。

【No.21】では、エディンバラ公来日を機に国歌概念のなかった日本が急遽君が代を作成した経緯をフランス国歌と比較しながら考察させます。MQは「日本が開国し、近代化の過程で国歌を作ったのはなぜか。国歌はどのように国民意識の形成に影響を与えるのか」です。
【No.22】では、学校教育・レコード・オリンピック応援歌・修身教科書・植民地政策など多様な資料を通じ、大衆への国歌普及と皇民化政策との関係を考察させます。MQは「学校で始まった国歌斉唱が広がり、どのように大衆に認知されていったか。またどのような問題が生じたか」です。

【問いの表現と検証について】
授業では生徒が表現した問いを集約し、「歴史総合通信」として配布・共有することで、生徒同士の対話を促しています。
大項目Bの実践では、生徒から以下のような多様な問いが生まれました。
①なぜそこまで急いで国歌を作る必要に駆られたのか。当時の世界の外交では「国歌がある」ということがどこまで一般常識として浸透していたのか。
②なぜ日本に関係のない外国人に作曲を頼んだのか。
③なぜ歌詞が平安時代の和歌なのか。
④なぜ短い歌をそのまま使い続けたのか。改定議論があったのになぜ変更されなかったのか。
⑤なぜ小学校からなのか。国歌に関する統一した見解は今でも存在しないのに、意味を教えずにとにかく歌わせたのはなぜか。
これらの問いは定期考査で検証させました。考査では「問いのうち1つ選び、仮説およびその妥当性について根拠とともに論じる」形式を採用しています。評価基準は教師と生徒が共同で作成しており、「根拠」と「歴史的文脈」の双方が揃っているかどうかを軸としています。最初は問いの意味すら分からなかった生徒も、他の生徒の解答との対話や教師のフィードバックを経て、一次史料や教科書から根拠を見つけ出し、歴史的文脈を踏まえた検証を行えるようになったケースが多く見られました。一方で、根拠となる資料を生徒自身がいかに見つけるか、また授業時間数の確保が今後の課題です。
スプレッドシートを活用した解答の集約と「歴史総合通信」による共有・対話、定期考査での問いの検証を組み合わせた評価も特徴です。生成AIを資料精読の補助として活用しています。

参考文献・資料

  • 【註】
    1. 小川幸司(2024)「『歴史総合』は世界史と日本史を本当に総合できるのか」(山川歴史PRESS No.21),山川出版社
    2. 渡部竜也・井手口泰典(2020)「社会科授業づくりの理論と方法 本質的な問いを生かした科学的探求学習」,明治図書出版
  • 【参考文献】
    ・辻田真佐憲(2015)「ふしぎな君が代」,幻冬舎
    ・高校歴史教育研究会編(2022)「資料と問いから考える歴史総合」,浜島書店
    ・上尾信也(2024)「国歌 勝者の音楽史」,春秋社
    ・弓狩匡純(2004)「国のうた」,文藝春秋
    ・石川宏平(2000)「君が代のすべて」,キングレコード CD
    ・香山リカ(2002)「ぷちナショナリズム症候群:若者たちのニッポン主義」,中央公論新社
    ・村上政彦(2002)「『君が代少年』を探して」,平凡社

この先に含まれるコンテンツは会員限定のコンテンツです。

単元に含まれる教材

この先に含まれるコンテンツは会員限定のコンテンツです。

コメント

コメントはログイン中の会員のみ表示されます。