憎しみの悪循環の乗り越えることの難しさ(パレスチナ問題)

教材のねらい

和歌山県立和歌山北高等学校の寺前駿先生からの提供です。

寺前先生からのメッセージ

 本教材は、現在大きく問題になっているパレスチナ問題に対して生徒たちが他者の痛みや問題をできる限り熟考し、その上で自分自身の答えを出してほしいと思い、作成しました。この教材は、以前行われた第87回愛知県世界史教育研究会に参加し、佐々木報告、野々山報告を参考にし、意見をいただき作成したものです。

 はじめに「あなたが人にされて「ゆるせる」ことと「ゆるせない」ことって何?」「この絵を描いた人はこの状況を赦せるだろうか?」と投げかけ、生徒たちが自分ごととしてパレスチナ問題を考えるためのきっかけを設定しました。
 最後には「今回の問い:痛みの歴史を消し去ること、痛みの悪循環を断ち切ることは本当に良いことなのか?過去の痛みを抱えたまま共に生きることはできないのか?」と問いを設定しました。この教材は、この問いに向けて生徒たちが考えを深められるように資料を選んでいます。

 資料1は、時代を遡ればユダヤ教徒がイスラーム帝国に保護された歴史があるという事実から、ある意味「協調」の時代があったことを示し、共に生きることのヒントになるのではないかと考えを促すものです。
 資料2は、ユダヤ人とパレスチナ人の対立を生む原因の一つにヨーロッパから始まった「国民国家」という考え方が広がったからだと学び、この「国民国家」という枠組みをほぐすことが解決の糸口になるのではないかと考えを促すものです。
 資料4は、パレスチナ国民憲章に「シオニストの侵略が始まる以前にパレスチナで正常に暮らしていたユダヤ教徒は、パレスチナ人とみなされる。」という条文があり、このことからイスラエルによる入植をなくせば協調に繋がるのではと考えを促すものです。
 資料5は二学期期末考査で出題した文章を改めて出しました。虐殺される苦しみの歴史をもつユダヤ人ならば、今のガサの苦しみもわかるのでは?そこから相互理解につながるのでは?と考えを促すものです。
 そして資料6では、ガザの現状を示すことで、ユダヤ人が被害者だった過去、そして現在は加害者に回っているという悪循環を理解してもらうために設定しました。また、問5の「資料5、資料6ではどちらの方が残酷だと考えるでしょうか。」では、映像に引っ張られ資料6と答える生徒が1つ目のクラスでは多かったため2つ目のクラスからは資料5に関連してNHKスペシャル『映像の世紀』からナチ党によるユダヤ人虐殺に関する映像を流しました。また、今回の問いの部分の生徒の意見についてまとめた文章も添付いたします。取り扱い注意でお願いします。生徒の意見からは、複数の資料から今回の問いを考えるということはあまりできていません。ただ、グループやクラス全体で対話し、ガザの現状に対して自分なりの考えを導き出そうという努力は見られました。

 この授業では、単元との関連が薄いと考えますので、来年度以降は「憎しみの悪循環」「赦す」といったものにフォーカスした単元計画を意識して作成したいと考えています。
 これらを踏まえて改善のためのご意見等ございましたら、ぜひお願いします。

参考文献・資料

  • 帝国書院『明解歴史総合』
  • 帝国書院『新詳世界史探究』
  • パレスチナ・イスラエル―共生への挑戦 Is Co・Existence Possible?; Dialogue with Palestine and Israel
    https://waseda20240127iscoexistencepossible.peatix.com/
  • 西川正雄編『角川世界史辞典』(2001年、角川書店)
  • 歴史学研究会編『世界史史料11 20世紀の世界Ⅱ−第二次世界大戦後 冷戦と開発』(2012年、岩波書店)
  • ハンナ・アーレント著、大久保和郎訳『全体主義の起原1【新版】』(2017年、みすず書房)
  • NHK『映像の世紀 第5集 世界は地獄を見た』
  • イスラエル、ガザ攻撃再開 民間人が次々と死傷(BBC News Japanより引用)
    https://youtu.be/IX7fN2heRHQ?feature=shared
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単元に含まれる教材

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