D(1)グローバル化への問い
教材のねらい
神奈川県立相原高等学校の上野信治先生からの提供です。
上野先生からのメッセージ
専門学科(農業科・商業科)の高校での実践になります。
大項目Dの(1)「グローバル化への問い」の実践。
これまで「近代化への問い」「国際秩序の変化や大衆化への問い」とやってきたなかで出てきた改善点を、今回の実践につなげました。
<授業について>
「❤人と資本の移動」「♠資源・エネルギーと地球環境」「♦社会運動」の3要素に分けて、グローバル化に関わる資料を掲載しました。
ジグソー活動等を経て、最終的に各自が「グローバル化は自分たちの生活や社会にどんな影響があるか」について仮説・見通しを立てられたら目標は達成できたと考えています。最後の問いはGoogleフォームで回収しましたが、途中経過の問いはグループワークをしながらGoogle Jamboardで記録をさせています。
B(1)やC(1)で自分が実感した課題を挙げると、
①資料のレベル設定:教科書や資料集の資料から問いづくりをさせると、そもそも資料を適切に読むことができておらず(指数って何ですか?といった質問など)、これからの学習に見通しを立てることができていなかった。
→生徒の学力や興味に応じた資料を考え、教師自身で資料を調整する必要性を実感。
②(1)で作成した問いについて、生徒自身が振り返る場面が設定できなかった。
→Jamboardに記録させ、(2)や(3)の学習時に活用予定。
③学習指導要領や教科書が例示している問いづくりのテーマ(交通と貿易、産業と人口など)をすべて網羅しようとして、結局深まりのある学びにつながらなかった。
→Dでは3つにテーマを精選。(2)や(3)での内容を見通して、オリジナルで「社会運動」というテーマで資料を収集。
④生徒から史料の語彙に関する問いが多く出てきて、学習の見通しにつながらない。
→「問いを作るうえで歴史的な見方・考え方を意識してみよう」という指示を追加。
中項目(1)問いづくりは、(2)(3)での学習内容の取捨選択に利用したり、折に触れて授業で振り返るように想定しています。歴史の学び方を学ぶうえで、(1)と(4)は特に重要だと思うのですが、教科書や資料集をそのまま使うのは難しい、というのが実践してみてわかったことです。
<実践を経た改善点>
Jamboardではどんなことを書かせるべきか今でも悩んでいます。あるクラスでは「MQに関わりそうなことを書いて」と指示しましたが、本校生徒にとってはかなり難易度が高かったようです。別のクラスでは「❤・♠・♦のテーマに関わること、資料から読み取れることを書いて」と指示しましたが、これだと細かい問いは出てきますが資料同士をつなげるような議論・問いには発展できていませんでした。そもそもジグソー法ではなく各自が考えるほうが資料同士の関連が見つけやすかったかもしれません。
学習指導要領の目標はひとまず達成できていると思いますが、生徒からは「結局モヤモヤする」という感想も出てくる授業なので、辛抱強く学習観の転換を唱え続ける必要性を感じています。
参考文献・資料
- 『現代の歴史総合みる・読みとく・考える』(山川出版社、2022年)
- 『資料と問いから考える歴史総合』(浜島書店、2022年)
- 『グローバルワイド最新世界史図表』(第一学習社、2023年)
- 『相模原市史 現代資料編』(2008年)
- 『神奈川県史』
- 相模原地方自治研究センター『自治研ブックレット5 相模原における戦車闘争の意義と承継』(2022年)
- 相模原地方自治研究センター『西門であいましょう-戦車闘争からのメッセージ-』(2023年)