東南アジアに開発独裁が登場したのはなぜか
教材のねらい
立命館宇治中学校・高等学校の大川沙織先生からの提供です。
単元や教材の説明
*詳しくは、拙稿大川沙織「東南アジアに開発独裁が登場したのはなぜか」(歴史教育者協議会『歴史地理教育』(No.937 2022年3月増刊号)をご覧ください。
開発独裁がなぜ登場したのかを考える授業は管見の限りではそう多くないようです。東南アジアの現代史といえば、ベトナム戦争関連の実践が多いように見受けられました。また、各社教科書では、戦後アジアの経済発展という文脈で、簡単に紹介されています。
この教材は、経済面ではなく開発独裁じたいをテーマにして、人権を制限し、経済政策を自由化する開発独裁がなぜ東南アジアに登場したのかを考えるものです。これを応用して、現在存在する権威主義的政権を冷静に分析することが可能ではないかと思います。 これを使って授業された先生はぜひご意見ご感想をお聞かせください。
*4時間を想定
◆1時間目
- SQ①第二次世界大戦後、東南アジアはどのようにして植民地支配から脱したのか
- SQ②宗主国からの独立後、東南アジアは国際社会の中でどのような意味を持つ地域となったのか
- 【ねらい】インドネシアやベトナムでは、植民地支配から脱するために宗主国との間で戦争が起こったこと、特にインドシナ戦争の終結となったジュネーブ条約により、ベトナムが分断されたことで、冷戦体制下における東南アジアの重要度が増し、アメリカが実力行使をすることでベトナム戦争が引き起こされることを理解する。
- 【作業①】教科書や資料集を参考に、東南アジア諸国の旧宗主国を確認する。白地図を用意して書き込もう。オランダやフランスからの独立戦争を理解させるため、第二次世界大戦中、日本占領下に入る以前の旧宗主国を確認している。ミャンマー、マレーシア、シンガポールはイギリス、インドネシアはオランダ、ベトナム、ラオス、カンボジアはフランス、フィリピンはアメリカに塗り分けられる。
- 【作業②】インドネシアとベトナムを取り上げ、独立宣言をしてから実際に独立するまで何が起こったかをまとめよう。(インドシナ戦争とベトナム戦争解説)
- 【作業③】東南アジア近隣諸国の社会主義国を把握する。
- 一九五〇年前後の社会主義国を作業1で使った白地図に書き込んでみよう。社会主義国の領袖であるソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)と、一九四九年に建国した巨大な社会主義国である中華人民共和国(中国)を必ずチェックしておこう。中国の建国により、欧米の西側諸国がアジアの共産化を懸念するようになっていた。
- 【問い】作業1~3から、SQ①,②にこたえてみよう。
◆2時間目
- SQ③開発独裁とはどのような政治体制だったのか
- 【ねらい】開発独裁がどのようなものかを理解し、その政権が樹立した背景を知る。
- 【作業5】インドネシア、マレーシア、シンガポールの事例から、開発独裁は何を自由化し何を制限したのかに着目してまとめてみよう。
◆3~4時間目
- MQ東南アジアに開発独裁が登場したのはなぜか(SQ①~③を総合して考える)
- 【問い】この授業全体で調べたことをもとに、MQにこたえてみよう
*本教材は教材共有サイト(旧サイト)に2022年3月24日にアップロードされた教材と同じものです。
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単元に含まれる教材
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