日本とイスラエルが構築される過程から「年間を貫くEQ」を導く
教材のねらい
福岡雙葉中学・高等学校の高橋毅先生からの提供です。
高橋先生からのメッセージ
福岡雙葉中学・高等学校の高橋毅と申します。近世イギリス帝国史・植民地史・海事史が専門です。https://researchmap.jp/pressgangriot
世界史探究大項目A「世界史へのまなざし」「日常生活からみる世界の歴史」の授業教材です。今年度のイントロダクションとして、3時間で計画・実施しました。
授業目標は「なぜ歴史を学ぶのか」(歴史を学ぶ意義)を、「日常」と「現実」をつなぐ結節点として意味づけることです。歴史的な見方・考え方として、「構築主義」を採用しています。
授業方法は、「問いとそれへの解答(MQ1)」→「KCJ(MQ2)」を通して、本時のEQ「国はどのようにして、そして誰のためにつくられるのか」を考察しました。そして生徒の記述を、年間を貫くEQ「「国」や「地域」はどのような「つながり」と「摩擦」によってつくられるのか」とつなげました。
教材の構成の意図は以下の3点です。
①中学社会や地理総合、歴史総合、公共で学んだ内容、私たちの住む日本、そしてイスラエルをコンテンツとして順に設定し、生徒の身近なところ(日常)から徐々にイスラエルという「現実」に繋げようとした
②日本に関するMQ1で「いつから」を強調することで「国」の構築性を強調した
③イスラエルに関するMQ2で「誰のために」を設定し、「国」がさまざまなアクターの言動が交錯する中でつくられる点を強調した
反省点は以下の2点です。
①時数の関係から「日本」をかなり雑駁に扱わざるを得なかった。
②KCJ資料全体としてイギリスの政策的な意図に関する説明に偏った。特にアメリカの意図をSQ3にもっと入れるべきだった。
生徒から出された主語は「イギリス」「ユダヤ」が多数でした。今おもえば、このKCJの解答を踏まえ、「ではなぜ今イスラエルと結託しているのはイギリスではなくアメリカなのか」などの問いを投げ、補足資料を提示すれば良かったのかもしれません。
最後に教材作成について、KCJ資料は参考文献を複数参照して作成しました。また教材作成にあたり、神戸海星女子学院中学校・高等学校の安達漱也先生に、「本時のEQ」を「「国」とは誰のためにどのようにしてつくられたのか」ではなく、あえて「「国」とはどのように、そして誰のためにつくられたのか」にすることで、「誰」を強調し主体の発見を促してはどうか、というご助言をいただきました。改めて感謝申し上げます。
自身の失敗も含め、荒削りの教材だと思います。特にイスラエルKCJの部分はより洗練させたいです。先生方の忌憚なきご意見を頂戴できれば幸甚です。何卒よろしくお願いします。
参考文献・資料
- 臼杵陽『世界史の中のパレスチナ問題』(講談社現代新書/2013年)
- 岡真理『ガザとは何か:パレスチナを知るための緊急講義』(大和書房/2023年)
- 高橋和夫『イランとアメリカ、そしてイスラエル:「ガザ以後」の中東』(朝日新書/2025年)
- 高橋和夫『アラブとイスラエル:パレスチナ問題の構図』(講談社現代新書/1992年)
- 鶴見太郎『ユダヤ人の歴史:古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで』(中公新書/2026年)
- テッサ・モーリス=スズキ『日本を再発明するー時間、空間、ネーション』(以文社/2014年)
- ブルース・バートン『国境の誕生:太宰府から見た日本の原形』(NHK出版/2001年)
- ブルース・バートン『日本の「境界」:前近代の国家・民族・文化』(吉川弘文館/2002年)
- 浜下武志『沖縄入門:アジアをつなぐ海域構想』(ちくま新書/2000年)
- 高良倉吉『琉球王国』(岩波新書/1993年)