生徒が歴史を「語る」世界史探究の授業実践-メタ・ヒストリー学習の手法を利用したアメリカ西部開拓史の歴史叙述-

教材のねらい

愛知県立中村高等学校(前任:愛知県立豊明高等学校)の加島悠太郎先生からの提供です。

加島先生からのメッセージ

本教材は、服部一秀(2016)の「社会の中の歴史に関するメタ・ヒストリー学習」の三層構造を理論的根拠として設計した授業プリントです。東京ディズニーランドのウエスタンリバー鉄道で放送されるナレーションを「歴史語り」として位置づけ、(第1層)語られ方の理解→(第2層)語られ方の理由・背景の分析→(第3層)語りの批判と新しい歴史の構築、という三段階の学習を構成しています。

2024年度の実践では、2つの成果が確認されました。第1に、生徒が複数の資料を多角的に分析し、史実に基づいた歴史語りを自ら構築できたことです。特に多くの班が先住民に関する語りを修正し、「インディアン」を「ネイティブ・アメリカン」に改めたり、強制移住への言及を加えたりするなど、語られていなかった視点を盛り込みました。また、批判的思考の重要性に言及した生徒は全体の約7割にのぼり、中には別のディズニー映画の歴史語りを批判的に分析するなど、学習の転移が見られた事例もありました。第2に、生徒が「歴史の構築性」、すなわち同じ対象であっても語り手の立場によって歴史叙述が大きく異なるという特性に気づいたことです(愛知県世界史教育研究会レポート、2025年より)。

【今後の課題と展望】
本実践では、生徒の歴史語りが開拓者と先住民の二項対立に収束する傾向が 一部に見られまた。しかし西部開拓の時代には、奴隷として生きた黒人や中国系移民、アトラクションを楽しむゲスト自身など、多様な立場の人々が存在していました。こうした視点を生徒が自ら発見・考慮できるよう、参考文献の選定や発問の工夫を通じた教材改善を継続していきます。本教材のご活用・ご改善に関するフィードバックを歓迎します。

【ナレーション原文について】
著作権上の理由により、プリント内のナレーション原文部分は非公開としています。原文の確認については、現地のアトラクション乗車時、またはネット上に存在する文字起こし資料を各自でご参照ください。

参考文献・資料

  • 【使用教科書・資料集】
    木村靖二ほか編『詳説世界史』(世探704)山川出版社
    第一学習社編集部編著『グローバルワイド 最新 世界史図表』(新課程版)第一学習社
  • 【参考文献】
    加島悠太郎「原爆の歴史を語るメタヒストリー学習の授業構成と実践事例案」『地歴・公民科資料ChiReKo(2024年度3学期号)』帝国書院、2025年、16-19頁
    服部一秀「社会のなかの歴史に関するメタ・ヒストリー学習の意義―ドイツの歴史教科書『歴史と出来事―テューリンゲン州版―』を手がかりにして―」『社会系教科教育学研究』第28号、2016年、11-20頁
    植原督司「現代とつなぐ歴史授業-諸外国の人々の歴史認識を分析するメタ・ヒストリー学習」『社会科教育』第781号、明治図書、2024年、116-119頁
    玉井慎也・加藤健司・三浦寛之・画角遼平・田中峻斗・神田颯・川口広美「『ヒストリオグラフィー』としてのメタヒストリー学習の開発・実践-高校日本史単元『「大正デモクラシー」言説の歴史的展開』を事例に-」『北海道教育大学紀要』第76巻、2024年、81-96頁
    森脇由美子「第5章 市場革命と領土拡大」和田光弘編著『大学で学ぶアメリカ史』ミネルヴァ書房、2014年、87-114頁
    ウェルズ恵子「第3章 西部への道-欲望、祈り、犠牲の足跡、そして鉄路」亀井俊介編著『アメリカ文化史入門』昭和堂、2006年、59-82頁
    野村達朗『大陸国家アメリカの展開』(世界史リブレット32)山川出版社、1996年
    東京ディズニーランドホームページ(ウエスタンランド紹介:https://www.tokyodisneyresort.jp/tdr/facility/themeland.html、ウエスタンリバー鉄道紹介:https://www.tokyodisneyresort.jp/tdl/attraction/detail/154/、最終閲覧2025年3月5日)
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