中学地理「モノカルチャー経済」から考えるアフリカと南アメリカ

教材のねらい

福岡雙葉中学・高等学校の高橋毅先生からの提供です。

高橋先生からのメッセージ

 初投稿です。福岡雙葉中学・高等学校の高橋毅と申します。近世イギリス帝国史・植民地史・海事史が専門です。https://researchmap.jp/pressgangriot

 中学地理「大項目B 世界の様々な地域 中項目(2)世界の諸地域 ③アフリカ ⑤南アメリカ」の授業プリントです。

 まずは教材共有サイトで中学地理の投稿に至った意図を説明させてください。以下の3点が主な問題関心です。

 ①歴史総合、地理総合、公共それぞれの科目としての共通点と差異は何か。
 ②中学社会と歴史総合、地理総合、公共との科目としての共通点と差異は何か。
 ③上記①と②の議論を深めればそれぞれの「目標」がより明確になるので、内容の精選を進めやすくなるのではないか。

 以上を踏まえ、どの科目でも取り上げられ得るコンテンツを選定しました。(ただし、元々の専門が上記の通りなのもあり、自身の関心を地理に応用した結果、この教材が仕上がった…という方が正確かもしれません。)

 では、教材の内容について説明していきます。まず前提となるのは、大項目B(2)の指導要領本文です(以下抜粋)。

「ア 次のような知識を身に付けること。
(ア)世界各地で顕在化している地球的課題は,それが見られる地域の地域的特色の影響を受けて,現れ方が異なることを理解すること。
(イ)①から⑥までの世界の各州に暮らす人々の生活を基に,各州の地域的特色を大観し理解すること。」
「イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。
(ア)①から⑥までの世界の各州において,地域で見られる地球的課題の要因や影響を,州という地域の広がりや地域内の結び付きなどに着目して,それらの地域的特色と関連付けて多面的・多角的に考察し,表現すること。」
「イ (2)については,次のとおり取り扱うものとする。
(ア)州ごとに設ける主題については,各州に暮らす人々の生活の様子
を的確に把握できる事象を取り上げるとともに,そこで特徴的に見られる地球的課題と関連付けて取り上げること。
(イ)取り上げる地球的課題については,地域間の共通性に気付き,我が国の国土の認識を深め,持続可能な社会づくりを考える上で効果的であるという観点から設定すること。また,州ごとに異なるものとなるようにすること。」

 このうち、「(ア)世界各地で顕在化している地球的課題は,それが見られる地域の地域的特色の影響を受けて,現れ方が異なることを理解すること。」というところに着目しました。

 この二つの州の「地域の特色」を理解する上で有効な主題を検討すると、指導要領解説ではアフリカの主題例として「耕作地の砂漠化、経済支援に関わる問題」、南アフリカの主題例として「森林の伐採と開発、商品作物の栽培に関わる問題」が挙げられています。また、帝国書院の教科書記述を確認すると、それぞれの主題が①「モノカルチャー経済」からの脱却(アフリカ州)、②モノカルチャー経済から脱却したものの、「開発と保全」のバランスをどうとるか(南アフリカ州)、となっています。よって「モノカルチャー経済」を結節点として位置付け、二つの地域を対比し、地域の共通点と差異を探ることを通して、「地域の特色」の理解を促しつつ、地球的課題の考察へ繋げられるのではないかと考えました。

 以上を踏まえ、大項目(2)の「目標(objective)」を「地域ごとの地球的課題を地域の特色を踏まえながら理解すること」、授業の「ねらい(aim)」を「モノカルチャー経済の概念的理解を促しながら、地球的課題とつなげて考えること」と設定しました。その「導入」としてKCJを用い、MQ.を「アフリカの現状と課題は何か」、「モノカルチャー経済を脱したブラジルの現状と課題は何か」と設定し、KCJを作成しました。

 授業方法としてKCJを採用した意図は、①前後のヨーロッパ州や北アメリカ州の授業は(なんちゃって)問いの構造図で授業を作らざるを得ないので、活動を通して教室に活気をもたらしたい、②①と関連しますが、対話を通して地球的課題について考察を深めてほしい、③生徒の学ぶ様子を観察したい、といったものが挙げられます。

 KCJのフォーマットは武井寛太先生の教材を参考にさせていただきました。また、プリント内の資料は帝国書院『中学校社会科地図』、本文は帝国書院『中学生の地理』、東京書籍『新しい社会 地理』をベースにして、宮地秀作『くわしい中学地理』(文英堂)、『最新地理資料集』(明治図書)『地理の学習1』(浜島書店)あたりを参考にし、適宜変更を加えています。生徒の「慣れ」も鑑みて、南アメリカ州の資料は文章量を増やしていますが、どちらも読み仮名をふるなどの発達段階への配慮はおこなっています。

 三つのSQの構成ですが、協調を促すため、工業・農業についての資料に、他二つの内容を繋ぐ役割の資料を混ぜています。アフリカでは「農業+工業+モノカルチャー経済」、南アフリカでは「農業+工業+労働(農業や工業の従事者は誰?)」の構成です。

 実施のタイミングは、アフリカ、南アメリカそれぞれの導入(授業はじめ)です。2時間に分けて実施しています。1時間目は「予想〜ジグゾー活動」までおこないます。2時間目で「クロストーク〜活動後の考察」まで終わらせます。その後、3時間目で授業プリントを用いながら、知識を整理し直します。

 結果、きちんとしたデータがあるわけではありませんが、KCJ導入後は「(なんちゃって)問いの構造図」でも生徒の発言が増えた感覚があります。また、決して勉強が得意ではない生徒でも、KCJならば積極的に発言し、ワークシートをまとめられる様子なども観察できました。なのでKCJを、対話を通して地球的課題を考える態度を促すための「潤滑油」として用いることができていると考えています。近年、星瑞希さんがKCJのデメリットとして「因果関係の抑制」を指摘されていますが、私自身現場でそれを感じています。それを解消するため、KCJは「導入」、問いの構造図は「因果関係の整理と補足」といった位置付けに至っています。

 拙い教材ですが、先生方のご意見をぜひお聞かせください。何卒よろしくお願いします。

参考文献・資料

  • 引用資料
     教科書『中学生の地理』(帝国書院)
     教科書『新しい社会地理』(東京書籍)
     『最新地理資料集』(明治図書)
     『中学校社会科地図』(帝国書院)
     宮地秀作『くわしい中学地理』(文英堂/2021年)
  • 参考文献
     川北稔『砂糖の世界史』(岩波ジュニア新書/1996年)
     川北稔『世界システム論講義』(ちくま学芸文庫/2016年)
     星瑞希「歴史授業における知識構成型ジグソー法のアフォーダンスと制約 : 「比較」と「因果関係」に着目したケーススタディ」『北海道教育大学紀要』77巻、2026年、pp. 113-128。
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