私たちは、暴力・差別・残虐行為などの過去の不正義に 対して責任を引き受けなければならないのだろうか?

教材のねらい

神奈川県立厚木清南高等学校の稲垣翼先生からの提供です。

稲垣先生からのメッセージ

本教材は、2023年6月に投稿した「「戦後日本はアメリカに守られて平和だった」という言説は、何を捨象してきたのだろうか?」(https://kodai-kyozai2.org/unit/post-0184/)を改変したものです。改変した箇所は、PDFファイルに赤字で示してあります。なお、♣資料の資料❼と、♠資料の資料❺に付随した注意喚起の文言は、2022年度に佐伯佳祐先生(広島市立舟入高等学校)が実践してくださった際に施された改善をそのまま私も援用させていただいております。

なお、本教材の詳細な目標論については拙稿「ポピュリスティックなレリバンス論に対抗する実用主義的な歴史教育の可能性-「連累」・「歴史への真摯さ」を思考概念として活用する-」(京都民科歴史部会『新しい歴史学のために』303号、2023年)をご覧ください(雑誌の詳細はこちら(外部リンク:京都民科歴史部会公式サイト))。

<教材の構成>
メイン課題「私たちは、暴力・差別・残虐行為などの過去の不正義に対して責任を引き受けなければならないのだろうか?」
♣「金網の中の土地」への祈りを、私たちはどのように聴くべきなのだろうか?
♥正気を失わずに「沖縄問題」を語り続けているのは誰なのか?
♠「性の防波堤」と「軍事化された男性性」の伝統を、私たちは断ち切ることができたのだろうか?
♦「海をあげる」という声に、あなたはどう応えますか?(ジグソー活動・クロストーク後に配布)

メイン課題は、ストレートに連累を主題に据えるものに改変しました。2022年夏の高大研大会でのパネル報告以来、「読ませる暴力」という言説への反論に注力するあまり、悪く言えば迷走を繰り返し本来の目標から遠ざかっていた授業を、本来目指していた軌道に引き戻した形になります(ただし、「読ませる暴力」への批判は授業の後景に退きながらも引き続き伏在する重要な論点だと考えております)。こうしたメイン課題の改変に伴い、全てのエキスパート資料の問いは、生徒の思考を連累に収斂させられるように変更してあります。

本授業実践で得られた成果と課題については、場を改めてご報告する機会を持ちたいと考えております。

参考文献・資料

  • ❶教材作成において引用または参考にした文献
    ・テッサ・モーリス=スズキ『過去は死なない―メディア・記憶・歴史』(岩波現代文庫、2014年)
    ・同『批判的想像力のために』(平凡社ライブラリー、2013年)
    ・松岡哲平『沖縄と核』(新潮社、2019年)
    ・林博史『米軍基地の歴史 世界ネットワークの形成と展開』(吉川弘文館、2012年)
    ・目取真俊「群蝶の木」(『面影と連れて 目取真俊短篇小説選集3』影書房、2013年)
    ・吉見俊也『親米と反米 戦後日本の政治的無意識』(岩波新書、2007年)
    ・森口豁『米軍政下の沖縄 アメリカ世の記憶』(高文研、2010年)
    ・鳥山敦「占領と基地問題」(歴史学研究会編『「歴史総合」をつむぐ』東京大学出版会、2022年)
    ・アケミ・ジョンソン『アメリカンビレッジの夜 基地の町・沖縄に生きる女たち』(紀伊國屋書店、2021年)
    ・『問いからはじまる歴史総合』東京法令出版、2022年
    ・新城郁夫編『沖縄・問いを立てる3 攪乱する島―ジェンダー的視点』(社会評論社、2008年)
    ・冨山一郎『流着の思想 「沖縄問題」の系譜学』(インパクト出版会、2013年)
    ・久留島典子・長野ひろ子・長志珠絵編『歴史を読み替える ジェンダーから見た日本史』(大月書店、2015年)
    ・デヴィッド・ヴァイン『米軍基地がやってきたこと』(原書房、2016年)
    ・マイク・モラスキー『新版 占領の記憶 記憶の占領 ―戦後沖縄・日本とアメリカ』(岩波現代文庫、2018年)
  • ❷授業改善にあたって引用または参考にした文献
    ・上間陽子『海をあげる』(筑摩書房、2020年)
    ・平井和子『占領下の女性たち 日本と満洲の性暴力・性売買・「親密な交際」』(岩波書店、2023年)
    ・カロリン・エムケ『なぜならそれは言葉にできるから――証言することと正義について』(みすず書房、2019年)

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