近世ヨーロッパ:ルネサンス~科学革命・啓蒙思想――「明るい・進んだ」時代観を問い直す
教材のねらい
岐阜県立岐阜高等学校の井上智也先生からの提供です。
井上先生からのメッセージ
岐阜県立岐阜高等学校3年次での授業実践です。
目標(論)
①前の単元で学んだ「近世アジアの帝国システム」と比較して、近世ヨーロッパ主権国家体制の特異性・中世からの変容点を理解すること。
②西欧中心の「近代化」に繋がる歴史的起源を理解すると共に、現代的諸課題の根源の一つでもあることについて考察し、自らの問題関心と関連させて表現すること。
・目標は上記の通りであり、①についてはワークシートNo.9の時限がハイライト、No.10~13はその事例探究の位置づけです。中世よりも近世において、アジアよりもヨーロッパの方で、戦争が頻発した理由、またそれ故平和を求める自然法・国際法やカントの思想が誕生したことを把握し、ヨーロッパ中心の進歩史観を相対化することを目指しました。
関連して、②は「中世暗黒説」を批判する西洋中世学の成果や、「ジェンダー史」の視角を導入することで「明るいルネサンス~近代化へ」という歴史観を批判・相対化することを目指しており、主にワークシートNo.6、8、10、14につながりを持たせています。
・実際の授業では、ワークシート+スライド・板書を使った教員の講義に、生徒主体の問いと史資料の読解・考察(ペアワーク・グループワーク)を挟み込む形式をとっています。授業理論としては「科学的探求学習」を意識していますが、厳密に適用できているわけではありません。
・ワークシートはNo.6~14ですが、実際には10時限ほどの時間をかけています。目標(論)を達成するためにより精選原理を働かせ、生徒の成果物を形成的評価していく必要性を感じています。特にNo. 8, 9, 14に関しては生徒の回答を検討して補足・フィードバックを行いました。
是非忌憚のないご意見・ご批判をよろしくお願いいたします。
参考文献・資料
- 教科書:『詳説世界史探究』山川出版社、資料集:『世界史のミュージアム』とうほう
- 参考・引用文献、資料
・津野田興一(2022)『「なぜ!?」からはじめる世界史』山川出版社。
・資料集『ニューステージ世界史詳覧』浜島書店。
・津野田興一「大人の基礎ノート 5分でわかる世界史」https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3964/600
目標①に関して
・岡本隆司ほか編(2022)『国際平和を歴史的に考える』山川出版社。
・津野田興一(2013)『やりなおし高校世界史』ちくま新書。
目標②に関して
・西洋中世学会編(2024)『西洋中世文化事典』丸善出版。
・三成美保・姫岡とし子・小浜正子編(2014)『歴史を読み替える:ジェンダーから見た世界史』大月書店。
・ブラック、ウィンストン(2021)『中世ヨーロッパ:ファクトとフィクション』大貫敏夫監訳、平凡社。
・日達綾(2024)「ジェンダーの近現代史から学ぶこと」東京歴教協歴史部会報告レジュメ
・比較ジェンダー史研究会 ホームページ(https://ch-gender.jp/wp/)